広がり始めたリターン転職、転職者にとって第3の選択肢

リターン転職も選択肢になる時代へ
「新しい転職先を探すか?」それとも「現職にとどまるか?」。岐路に立つと多くの人はこの2択で考えがちです。しかし近年、「リターン転職」という第3の選択肢の裾野が広がってきているのをご存知ですか?

「リターン転職」と言うと、聞き馴染みがない言葉かもしれませんが、かつては「出戻り」とも呼ばれていたもので、なんとなくネガティブなイメージを受ける人も多かったかもしれません。

しかし近年、そのイメージは大きく変わり始めています。各企業が元従業員の方々を再び採用する「アルムナイ採用(カムバック採用やジョブリターン制度とも呼ばれる)」に力を入れ始めたことで、古巣へ再入社する、アルバイト・パートとして復職するケース等も増えてきているのです。

企業側と働く側、双方の価値観、意識に変化あり

もちろん、古巣の企業、職場で退職を決めた当時は、なんらかの不満、または家庭の都合等がきっかけになって、退職の道を選んだ方がほとんどだと思います。

しかし、生産年齢人口の減少が始まり、人手不足の問題が顕在化し、人的資本の重要性が見直されるビジネス環境の中で、企業側もかつての古い考えを改め、待遇や福利厚生の制度を見直したり、外部で経験を積んできた人材を積極的に活用し、歓迎する傾向が強まっています。

また、働く側も転職が当たり前の時代になり、ライフイベントの状況に応じて企業に求めるもの(例:待遇条件はもちろん、組織カルチャーやワークライフバランス等)も多様化し、より自分自身にフィットする環境を求める意識も高まっています。

こういった内容を複合的に勘案した結果、「改めて過去働いた企業、職場の良さを感じた」「転職で得た経験やスキルを、今ならもっと活かせる」等の理由で古巣へ戻る、リターンすることを前向きに捉える転職者も増えてきています。

数字で見るリターン転職の現状

求人情報サービス会社「エン・ジャパン」が行った「出戻り転職に関する意識調査(2024年7月)」によると、出戻り転職をしたことがないユーザの36%が、出戻りを肯定的に捉える回答を行っています。

また、「一度退職した会社に出戻り転職をしたことはありますか?」という設問に対しても、9%が「ある」と回答していて、若い世代ほど戻る、リターンすることに対する心理的な抵抗感が薄くなってきています。

リターン転職を考える理由についても、「人間関係が良かった」「社風が合っていた」「外での経験が活かせそう」といった声が多く、リターン転職後の満足度が高いのも特徴の1つです。既知の環境なので安心して働ける、周囲との人間関係の良さが決め手になっているケースが多く見られます。

近年は「退職=縁を切る」ではなく、「関係を保ちながら次のステージへ進む」という考え方が少しずつ浸透し、その流れの中で「再び戻る」という選択も、自然と受け入れられる土壌になってきているのかもしれません。

数字で見る企業側のアルムナイ採用拡大

「マイナビ」が行っている「中途採用・転職活動の定点調査(2024年1月度)」によれば、40.9%の企業が既にアルムナイ採用を実施中、そして今後検討しているを含めた場合は全体の69.2%がアルムナイ採用に対して前向きな考えを持っています。

企業規模別に見た場合は、従業員数301名以上の企業の55.7%がアルムナイ採用を実施中、従業員数55名以下の企業の場合は22.6%が実施中ということで、大企業が中心になって取り組みが加速、徐々に中小企業にもその流れが波及しつつあることが見えてきます。

例えば「トヨタ自動車」でも、出産や育児、介護などの理由で退職した社員が再び働けるよう支援する「アルムナイ採用制度」が設けられています。再雇用を希望する場合はキャリア採用と同じプロセスで応募が可能で、社外で得た経験やスキルを評価し、多様な働き方を柔軟に受け入れる仕組みが整えられています。

また「明治」でも「リ・メイジ制度」と呼ばれる再入社制度を導入していて、結婚・出産・転居などを理由に退職した社員が、希望すれば再び同社で働けるような仕組みが整えられています。その他にも「資生堂」や「三菱重工業」などの企業でも、かつての社員を卒業生(アルムナイ)と呼び、社外で得た経験やスキルを前向きに評価し、採用する動きが広がっています。

近年はこういった企業の動きが加速していて、再入社だけでなく、プロジェクト単位での業務連携など、新たな関係づくりの形も増えてきつつあります。まさに「辞めたら終わり」だった時代から、「また戻れる」「経験を持ち帰れる」時代へと変わりつつあることを示している事例でもあります。

今後ますます、リターン転職が珍しいことではなくなり、歓迎されるケースも増えていく中で、「また働きたいと思える会社」との関係を、今のうちからゆるやかに残しておく。そんな選択肢を持っておくことが、これからのキャリア形成では自然になっていくのかもしれません。

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記事作成者
Alum Park編集部

Alum Park(アルムパーク)は、今後拡大が予想されている企業のアルムナイ採用(リターン転職)に関する実情や最新動向を、働く側の視点に立ってわかりやすく伝えていくために運営している専門サイトです。

変化し続ける人材ビジネスの世界で培った知見や実務経験をもとに、中立的な立場から詳しく解説しています。記事内容は独自の調査結果や公的資料、各企業の公開情報など、できるだけ信頼性の高い情報をもとに作成・公開しています。

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